新人教育

1~2年目

 1~2年目の目標は、大学病院の薬剤師としての基礎的な業務を一通り自分のものとすることです。具体的には初めに行われる病院全体のオリエンテーションに続き、調剤、化療などの各部門を約4か月でローテーションし、調剤や調製、鑑査の基本、窓口業務や電話対応、電子カルテの使い方、などを実際の業務の中で順次学んでいきます。

 この期間は3~5年目ぐらいの薬剤師がメンター薬剤師として指導・相談役に就きます。実際に必要となる業務を項目ごとに細分化した「名市大病院薬剤部 新人教育プログラム 業務確認表」を用いて本人とメンター薬剤師の双方で確認し、業務理解の漏れがないように工夫しています。

 基本研修ローテーションが完了してから、理解不足の部分の再研修や日当直の見習いを行い、日当直を開始します。同時に所属係の業務についてのより詳細な研修を2か月程度行った後に各部署に正式に配属となります。

 なお、病棟業務については各部署への正式配属にあわせて研修を開始します。できるだけ円滑に病棟業務研修を進めるため、4月の段階から週に半日の割合で、病棟業務主査と病棟専任薬剤師による演習(実際の症例をもとにした病棟での薬学的介入をグループディスカッション形式で学ぶ)を継続して行うようにしています。1年目の10月ごろ開始される実際の病棟業務研修では、病棟担当薬剤師の指導の下で業務見学⇒見習い⇒少数の患者を担当⇒複数の患者を担当、と順次スキルアップしていきます。

 当院での病棟業務は、複数病棟を複数薬剤師で担当するグループ制で進められます。全メンバーの情報共有を目的としたカンファランス(症例検討会:グループ内で週1回程度の頻度で実施)が、多くの疾患を理解するうえで効果的な学びの場となります。もちろん個人差はありますが、ほとんどの新人薬剤師は年度中には病棟担当薬剤師として一通りの知識・技能を身につけ、私たちが病棟業務のゴールとして掲げる「薬物療法に軸足を置きつつ、患者の利益のために自ら考え行動できる薬剤師」という理念を理解し、病棟を担当できるようになります。

 2年目の目標は、1年目で身につけた大学病院の薬剤師としての基礎的な業務への理解をより深め、完全に自分のものとすることです。業務は1年目と同様、「薬剤部内業務+病棟業務」の組み合わせとなりますが、どちらの業務についてもより深い知識・技能を身につけ、自立した業務遂行ができるようになることが目標となります。また、この時期の多くの薬剤師が実務実習生の病棟実習指導の担当・各種研修会への参加・学会での発表などに積極的に取り組んでいます(学会発表については、学位を持った薬剤師・専門薬剤師・教員などが適宜指導します)。もちろん学会への参加費等についてはできる限り薬剤部がサポートできる体制が確立しています。

 また、キャリアアップについては原則は自らが責任をもって進めるべきですが、特に新人のうちは「なかなか目標を決められない」・「具体的に何をすればよいかわからない」といった悩みを持つことが多いようです。このような悩みに対し、私たちはキャリアアップ担当者を試験的に設定し、若手薬剤師の相談に乗ったり、日病薬病院薬学認定などの取得が必須な資格の具体的な取得方法を指導したりする取り組みを行っています。

新人教育スケジュール

[図1.新人教育プログラム スケジュール表]

病棟研修

※画像をクリックするとPDFが表示されます

3~5年目

 3~5年目の目標は、2年目までに身につけた基礎をもとに、大学病院で求められる薬剤師としての専門性を追求することです。具体的には、この頃から(もちろん個人差ありますが)、本人の意向と組織的な必要度を考えながら、専門的な分野を担当してもらいます。

 具体的には、薬剤部内業務なら医薬品情報、麻薬、製剤など、チーム活動業務なら感染制御チーム(ICT)・栄養サポートチーム(NST)・緩和ケアチーム(PCT)・周術期疼痛管理チームなどがあります。学位取得希望者に対しては、主任教授である薬剤部長が中心となり、責任をもって研究室の紹介や論文投稿・英訳などのサポートを行っています。

 あわせて資格取得に関する進捗評価を行い、何らかの支障がある場合は薬剤部全体でのサポート(研修会参加や症例数確保など)を行い、しっかりと専門性を資格取得という形で実現していきます。

 また、教育に対する役割として、このころメンター薬剤師として新規職員の指導を担当します。

6~9年目

 6~9年目の目標は、専門性の追求に加えて、マネジメント能力の向上が重要となります。具体的にはただ与えられた業務をこなすだけでなく、他との連携・調整を恒常的に実施していく役割も順次学んでいただきます。係長との緊密な連携が前提ですが、他部署との交渉なども裁量を与えて任せていきますので、必然的にコミュニケーション能力やマネジメント能力が身につきます。業務の改善や教育についても、PDCAサイクルの活用などを積極的に意識し、係の中心として対応していただきます。

 専門性については、習得したスキル、取得した資格について更新に努めながら、後進の育成を行い、更なるスキルアップを目指していきます。

10年目以降

 10年目以降は、専門性、後進の育成、組織運営のマネジメントをバランスよく向上させることはもちろん、社会の動向や病院全体のミッションも常に意識して大学病院の薬剤師としての役割を果たすことが目標となります。具体的には管理職としての組織運営などに携わることとなります。